男の子はそのまま屋上を出て行って、ドアが閉まる音が、やけに大きく響いた。
ふう、と一息ついて、肩の力を抜いた、その瞬間。
突然、後ろから胸に腕が回ってきて、ぐっと強く引き寄せられる。
誰なのかはわかってるから、驚きはしないけれど。
「俺ら、付き合ってなかったん?」
低くて、少し不機嫌そうな声。
「……聞いてたの?」
ちらりと、斜め後ろを向いて反応を伺う。
そこには、案の定、むすっと眉間にしわを寄せた佐野の顔があった。
普段あまり表に出さない感情を、隠す気もないその表情。
「だって、付き合ってって言われてないもん」
精一杯、平然と。
「……お前、ちょっと来いや」
低く言い放たれて、次の瞬間。
「はっ?」
反論する暇もなく、佐野はその態勢のまま、ずるずるとあたしを引きずり始めた。
向かう先は、いつもの場所。
後ろ向きのまま歩かされて、何度も足を取られて、転びそうになる。
そのたびに、胸に回された腕に力が入るのが、余計に腹立たしい。
乱暴なくせに。
「ちょっと、危ないんだけど!」
この腕に、思いきり噛みついてやろうか。
怒ってるのは、あたしのほうだ。



