昼休み、気づけばもう学校の中でいちばんお気に入りの場所になってしまった屋上へ向かう。
風が少し強くて、制服のスカートが揺れる。
そこには、あたしを呼び出した男の子が、ひとりで立っていた。
フェンスの前でそわそわと落ち着かない様子で、何度もスマホを確認している。
不名誉な噂が流れていたあいだも、柏谷一千華の“天使っぷり”は変わらなかった。
笑えばかわいい、話せば優しい。
その評価は揺るがず、男子からの好感度も、結局ほとんど落ちなかった。
――よかった、なんて思うべきなんだろうけど。
「柏谷さん、来てくれてありがとう」
照れくさそうにそう言われて、あたしは反射的に、いつもの笑顔を作る。
口角を上げて、目を少し細めて。
「ううん、大丈夫だよ」
そう答えながら、心の中では、次に来る言葉をなんとなく予想していた。
こういう場所で、こういう空気で、呼び出される理由なんて、だいたい決まってる。
「……柏谷さんのこと、好きなんだけど……彼氏、いるよね?」
その言葉に、あたしの中で何かが一瞬、引っかかった。
「……え?」
思わず、間の抜けた声が出る。
彼氏?
「佐野くんと、付き合ってるんじゃないの?」
あたしの反応が、彼の予想とは違ったらしい。
目を丸くして、戸惑ったようにあたしを見ている。



