【完】ロマンスに、キス


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柏谷一千華、男好きらしい。
彼氏いるのに、合コン行ったらしい。
佐野朱李と三股してるらしい。



……と、合コンに行った日から一週間、不名誉極まりない噂は、あっという間に広まった。



でも、誰かがあたしの前に立って、直接何かを言ってくることはない。

ただ、遠巻きから、探るみたいな視線を向けられるだけ。



移動教室で廊下を歩いていると、あの、合コンで一緒だった女子三人に、通りすがりざまに「ブス」なんて言われた。

別に、痛くもかゆくもないし、何事もなかったみたいに華麗にスルーする。


ブス、って、どっちが?


頼まれたから行っただけなのに。
それで、この仕打ちは、さすがにひどいんじゃない?


そう思いながらも、口には出さず、鼻で笑う。



「柏谷さん、なんかいろんな噂流れてるけど、気にしなくていいからね。ただの噂だし」



クラスメイトは、心配してるふりをして、そんなことを言ってくる。

でも、それをわざわざ口に出して伝えてくること自体が、もう余計なんじゃないかと思う。


心の中では、どうせ、ざまあみろとか、思ってるんでしょ。

同情する側に立てて、少し優越感に浸ってるんでしょ。



「あは。ありがとう~」



口角をきれいに上げて、いつも通り、ニコッと笑っておいた。