【完】ロマンスに、キス




周りの女子たちは、目をまん丸にしてざわつく。

「えっ、佐野くんだ」「なんで?」と、困惑しつつも、目がハートになっている子たちまでいるのを、あたしは確実に見逃さなかった。



男たちは他校なので、佐野が誰かなんて知らないのは当然で、コウキくんが「なに、お前」と眉をひそめ、いかにもつかみかかりそうな雰囲気を出す。



ほんとに……なんなの、急に、なにこれ?



あたしも自分でも困惑していた。

面倒くさがりで、人の注目を嫌い、他人に興味なんてほとんどないはずの佐野が、こんなことをするなんて――思ってもみなかったから。



佐野は、コウキくんのことなんてまったく気にせず、あたしのカバンをぐいっと掴むと――



「おい、一千華、帰るぞ」



強引に、あたしを連れ出した。

歩幅が合わず、小走りになってしまう。



「ねえ!ちょっと!なんのつもり!?」



背中に向かって声を荒げるけれど、佐野は止まらない。


あ……お金、置いてきてない。



でももう遅く、気づけば外に出ていた。

急に佐野は立ち止まり、振り返ってあたしを見つめる。



「お前、俺のこと好きなんじゃねーのかよ」



はあ、はあ、と佐野についていくのに精いっぱいだったあたしは、肩で息をしながら、必死に頭を回転させる。


佐野が、なにを言いたいのか、わからないし、その言い方はあまりにも酷いと思う。