【完】ロマンスに、キス




さっきの佐野の顔が、頭をよぎる。

鳩が豆鉄砲を食らったみたいな、びっくりした表情。

あたしから離れることなんて、絶対にないって自信満々だったんだろう。


実際、そうだけど。


でも、こんなにも大事なことを口に出してくれないでいると、冷めることだってあるはず。

それなのに、あたしは、少し意地悪に思いながらも、どこかでちょっと嬉しい気持ちになってしまう。



佐野は、せいぜいあたしのことを考えてモヤモヤしてればいいんだ。



……そして、早くあたしに「好き」って言ってほしい。



タッチペンをぎゅっと握りしめた瞬間――


バンッ!


勢いよく扉が開いた。



「一千華!」


「…は?」



急いできたのか、髪は少し乱れ、額には汗が光っている佐野。

その姿を見た瞬間、頭が真っ白になった。