【完】ロマンスに、キス




あたしは、「知らない人」と言って、コウキくんの手を引きながら部屋に向かった。

佐野は、だいぶ怒ってるみたいだったけど、そんなのも知らなかった。



「えー、積極的だね」



コウキくんに言われて、心の中で、そんなんじゃないし、と思いつつも、つい反射的に「だめ?」と上目遣いをしてしまう。



「いや、超いい。どうする?このまま抜ける?」



コウキくんの、その言葉は無視しておくことにした。


部屋に戻ると、マイク越しに誰かの声が飛んでくる。



「ふたりでなにしてたんだよー!」



コウキくんが、「ドリンクバー行ってただけだわ」とあっさり返すと、あいかわらず女の子たちの視線が鋭くて、少しだけ睨まれてる気がする。



「一千華ちゃん、何歌う?」



タッチパネルをあたしの前に差し出すコウキくん。



「あたし、最近の歌わかんないなあ」



そう言いながら、ランキングをなんとなく眺めていると、ふと目に入ったのは、佐野の好きな歌手の名前。
……あ、そういえばこの歌のMV、見てたな、と思い出す。