ロマンスに、キス




ドア越しにちらっと中を覗くけれど、女の姿は確認できない。



「普通にクラスのやつだけど」



後ろから、佐野の声。

…ハッとした。

あたしが気になって、ここに来たんじゃないかって、思われたくない。
そんなこと、絶対に思われたくない。



「お前こそ、誰と来てんの?合コン?」



佐野はドリンクバーでコーヒーを入れながら、軽く笑って、冗談のつもりで言ったんだろう。

でも、あたしはなんだかイラっときてしまう。



「まあ、そう」



すると佐野は、ゆっくりとこちらを振り返り、眉をひそめて不思議そうに、そして少し苛立った顔で言った。



「…まじで言ってる?なんで?」



あたしは、もうそんなことしないと思ってたんだろう。
笑える。



「なんでって、なに?」



別に、佐野にいう理由なんてない。
だって、あたしたち、そういう関係じゃないし。


イラつく佐野を無視して、部屋に戻ろうとしたそのとき――



「一千華ちゃん」



振り返ると、目の前にはコウキくん。



「あ、知り合い?」



自然に佐野のほうを見やりながら、コウキくんはそう言った。