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「一千華ちゃん、だったよね?俺、こんなタイプの子に会ったの初めてだわ」
不意にさりげなく距離を詰めてくる男。
あぁ、この感覚……久しぶりだな、と、ふと思い出す。
カラオケの騒がしい空間の中で、アニソンを熱唱している他の男たちに視線をやると、耳元でささやかれる。
「ね、こっち見て」
男は4人いて、見た目だけで言えば、この人が、あたしにとって一番「タイプな顔」をしている。
でも、女慣れしてそうなところは、減点。
「あたし、コウキくんしか見てないよ」
なんて、甘ったるい声をわざと意識的にかけてやると、コウキくんは、にやりと笑って、「ふたりで抜け出さない?」なんて言いながら、あたしの左手にちょこんと触れてくる。
こういう駆け引き、悪くない。
好意を前面に出されるのって、意外と悪くないな、と改めて思った。
チラッと前を見れば、あたしにコウキくんを取られて悔しいのか、女子たちはむっとした顔で睨んでいる。
でも、これだってあたしからじゃないし、そもそもかわいいから仕方ないし、合コンに誘ってきたのもそっちだしね?
心の中では、ちょっと勝ち誇ったような気分になるが、別に、遊ぶつもりは最初からない。
だから、軽く笑みを浮かべて、「ちょっとドリンクバー行ってくるね」なんて言いながら、さっさと部屋を出た。



