なんだ、あいつ根性ねーな、と佐野が呟く。
「……あたし、誑かされた覚えないんですけど」
「そこかよ」
「それに、あたし……佐野に“好き”って言った覚えもないし」
「そうだっけ?」
「……そうだよ。言ってもないし、言われてもないし」
「そうだっけ」
……そうだっけ、ってなんだ。
あたしが、佐野に向けている気持ちを、佐野はとっくに気づいてるんじゃないか、って思う。
なんでもない顔をしてるけど、佐野、はっきり言ってよ。
あたしだって、バカじゃない。
佐野の言葉、行動、あたしを見る目、あたしを追う視線。全部、少しでもそういう感情が入ってるってこと、気づいてないわけないでしょ。
でも、口には出さない。
お互い、言いたくないし、言えない。
素直じゃない。
いつになったら、あたしは素直になれるのか、そして、佐野の方も、いつになったら素直になるのか。
でも、お願いだから、あたしからじゃなくて、佐野から、素直になってほしい。
胸の奥で小さくため息をつく。
「……かわいいって言ったのは、ほんと?」
「さあな」
笑いながら、はぐらかす佐野にやっぱりイラっとはするけれど。
でも、そんな佐野を見て、あたしの心臓は、また、ドキドキしてしまった。



