ロマンスに、キス




宮原は、あたしの言葉を聞くと、面白そうに口角を上げた。



「その顔で、また誑かしてんの?こいつの性格、知ってる?顔はいいかもしれないけど――性格はブス!」


「……は、」



声にならなかった。


胸の奥で、何かが一気に込み上げてくる。

怒りと、悔しさと、そして、思い出したくもなかった言葉。


今更、何を言われたっていい。


でも。

佐野の前で。
佐野が、すぐ隣にいるこの状況で。

そんなふうに言われるのだけは、どうしても、耐えられなかった。


殴ってやりたい。叫びたい。


あたしは唇をきつく噛みしめて、泣きそうになるのを、必死でこらえていた、そのとき。



佐野が、何も言わずに、あたしの頬に触れた。

あたたかい指先。



「口、貸して」


「え?」



あまりに突然で、意味がわからなかった。

理由も、説明も、脈絡もない。


でも、次の瞬間。

佐野は、息をするみたいに自然に、あたしの唇に口づけた。


まるで、初めて会ったときの、強引にキスされたあの瞬間を、思い出させるような。