ロマンスに、キス




そうか、佐野、あたしのこと、心配してくれてるんだ。


初めて、あたしがトラウマの話をしたとき、佐野は何も言わなかった。慰めも、アドバイスも、一切なかった。あたしは、別に求めていなかった。ただ、話しただけで、それで十分だった。


でも、今。

こうして、佐野なりに心配してくれている。


その事実を知った瞬間、胸がぎゅっと締めつけられるように熱くなってしまい、それを隠すように、唇をきゅっと結ぶ。



「…佐野、心配?」


「水ぶっかけられたくないし」


「ウザい」



怒んなよ、と笑う佐野。怒ってないし。

でも、佐野がそう言ってくれたからもう十分だった。


たぶん、今日のあたしは、今後もしあのトラウマの相手に会ったとしても、前よりずっと冷静でいられる。

水をぶっかけることも、きっとないと思う……分からないけど。