ロマンスに、キス


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放課後。

いつもの駅での待ち合わせは、佐野が嫌がった。
理由は単純で、あたしがナンパに絡まれてて面倒だから、らしい。



……余計なお世話だ。助けてくれないくせに。


普通に学校から一緒に行けばいいだろ、と言われたけど、それはそれで困る。というか、嫌だった。

学校の人に見られるのは、絶対に避けたい。変な噂を立てられるのはもっと嫌って、前も佐野に言ったことあるし。



だから結局、妥協案みたいな形になった。



校門前。

待ち合わせ、と言えるかは分からない。
ただ、あたしが先に出て、少し離れたところから佐野が来たのを確認する。
それから、佐野はあたしの後ろをついてくる。


歩きながら、背中に視線を感じる。振り返らなくても、佐野がいるのがわかる。



ストーカーされてる気分。



ストーカーといえば、先日、屋上で告白してきたあの男は、「柏谷一千華はビッチ」なんて、不名誉な噂を流していたらしい。

……らしい、というのは、あたしの耳に直接入ってきたわけじゃないから。



でも、その噂は、たった二日ほどで消えた。
誰も信じなかったんだと思う。

これまで時間をかけて築いてきた“天使”のイメージ。一人の負け惜しみみたいな悪意なんて、簡単に飲み込まれる程度には、強い。


あたしの勝ち、ってわけ。