ロマンスに、キス




佐野は言葉を補足するみたいに、あたしの鎖骨から、うなじのあたりにかけて――

触れはしない。

触れはしないけれど、そこにある、というのがはっきりわかる距離まで手を近づけて、示した。


キスはするくせに、こういうところには、絶対に触れてこない。


触れてほしいなんて、微塵も思ってない。本当に。

触れないまま保たれている、その微妙な距離が、妙に落ち着かなくて、むずむずする。



ずるい。


それに、鎖骨とか、うなじとか。
どこ見てるの、佐野。



「……変態」



精一杯の抵抗で睨んでみたら、佐野は悪びれる様子もなく肩をすくめた。



「男なんて大体そうだわ」



大体、ってなに。誰が相手でも、そうなの?

あたしじゃない女の子に対しても、同じこと思うの?


そんな質問、できるわけないし、したくもない。

どうせ聞いたら、「そうだけど?」なんて、平然とした顔で返されるに決まってる。



想像しただけで、腹が立つ。

ムカつく。