ロマンスに、キス




「俺、こっちのほうが好き」



さらっと。

たぶん、深い意味なんてないだろうけど、どうして、こんなにも胸が高鳴るの。



「……ふーん」



やっと絞り出した返事は、我ながら素っ気なかった。

興味ないですよ、って顔をしてみせるのは得意なのに、その裏側では、感情が大騒ぎしている。



――じゃあ、毎日これでいこうかな。



ついさっきまで、巻きたかったのに。ちゃんと時間をかけて、完璧にしたかったのになんて思ってたくせに、たった一言で、考えがひっくり返る。


……あたし、佐野に振り回されすぎじゃない?


そう思いながらも、ポニーテールをほどく気にはなれなくて、指先に触れる体温から、目をそらすこともできなかった。



「首、細いし。ここらへん、見えるのがいい」



聞いてもないのに、あたしが理由を知りたそうな顔をしていたのか、それとも佐野がただ言いたかっただけなのかは、わからない。