「そういや、放課後暇?」
……そういや、もなにも。
今、来たばかりなんだけど。あたしの顔を認識して、出てくる第一声がそれ?
今日もかわいいね、くらい言えないわけ?
いや、別に言ってほしいわけじゃないけど。本当に。
万が一、佐野の口からそんな言葉が出てきたら、それはそれで気持ち悪くて、たぶん全力で引くと思うし。
佐野は、あたしの返事を待つでもなく、少しだけ体をずらして、あたしが座れるスペースを空けた。
それから、手のひらでその場所を軽く払う。
……あ、と思う。
前は、こんなことしなかった。
人のことなんてどうでもよさそうで、気づいても気づかないふりをするような男だったのに。
少し前なら、そのまま「座るなら勝手にどうぞ」って顔をしていたはずだ。
変なの。
こういうのは、できるようになったんだなと思いながら、隣に座る。
昼休み、非常階段で、ひとりで食べていたはずのお弁当は、いつの間にか佐野と屋上で並んで食べるものになっていた。
「寒くなったらどうするの?」って聞いたら、「とっておきの場所があんだよ」なんて言うから、もう目星はついてるらしい。
というか、去年も、そこで食べてたのかも。



