ロマンスに、キス




2時間15分ほどのホラー映画は、次回作への期待が高まるような、嫌な余韻を残して終わった。


……やっぱり、これにしてよかった。



ロビーに出て、何気なく佐野のほうを見る。
上映前はあんなに不服そうだったくせに、「前作見てなくても、いけたな」なんて、平然と言う。


“次回作も一緒に見に来よーね”なんて、口が裂けても言わないけど。


でも。
そうなったら、いいな、とは思う。

それくらいは、許してほしい。



歩きながら、ポケットの中の携帯を指でなぞる。

映画の余韻と、少しだけ柔らいだ気持ちに背中を押されて、ふと、思い出したように口を開いた。



「あたし、佐野の連絡先、消そうと思ってたんだよね」



自分でも、なんで今こんなこと言ったのか、わからない。



「おー、急になに?悪口始まんの?」


「そうじゃないけど。今は、佐野しか残ってない。家族と佐野以外、全部消した」



言い切った瞬間、佐野は、ぴたりと足を止めた。

そして、珍しく、はっきりと驚いた顔でこっちを見る。