「今日はなに見るの?」
映画館について、ロビーに貼られた映画のポスターを見上げながら聞くと、佐野は少しだけ顎を上げて、無造作に指をさした。
「こっちか、こっち」
その先には、派手な爆発が目を引く洋画のアクションと、暗い色味の邦画ミステリー。
「あたし、あれがいい」
そう言って指さしたのは、シリーズもののホラー映画。
血の気の引くタイトルロゴと、不気味な笑顔のビジュアル。
「前作よかったから」
「えー」
心底嫌そうな声。
「いつも佐野に合わせてるんだから、たまにはあたしの希望、聞いてくれてもいいんじゃない?」
そう言った瞬間、佐野が片眉を上げた。
あからさまに不服そうな、その顔。
……ほんとに。
今、殴ったらどんな顔するんだろ、って一瞬考えたくらいにはムカついた。
「わがままな女だな」
その一言に、心の中で即座に反論する。
どの口が言ってんの。
「わがままな男」
言い返すと、佐野は短く舌打ちをした。
ほんとに、なんでこいつがモテるのか、ちっともわからない。
無愛想で、自己中で、空気も読まないくせに。
……まあ、人のことは言えない、って自分でも思う。
でも、それでも、あたしのほうが、絶対マシだ。



