ロマンスに、キス




その連絡から、本当にすぐだった。

視界の端に、見慣れた背の高さと歩き方を見つける。


――あ、来た。


ポケットに手を突っ込んで、気だるそうに歩く佐野。

あたしの隣で、相変わらずぺちゃくちゃと喋り続けている男に気づくと、露骨に面倒くさそうな顔をした。


……失礼なやつ。
でも、助けてくれる気はないらしい。


佐野は何も言わず、あたしのほうも見ずに、携帯を取り出して何かを打ち始める。

その態度に、じわっと苛立ちがこみ上げた、その瞬間。


また、通知音。



〈早くこっち来い〉



なにそれ。
ポケットに手を突っ込んだまま、相変わらず面倒くさそうな顔。
たぶん、今ちょっとだけ機嫌が悪い。


……怒らせたら、余計だるいからね。


あたしは隣の男の存在を、きれいさっぱり無視することにして、佐野のもとへ小走りで駆け寄った。
背中越しに、何か言ってた気もするけど、知らない。



「今度から、駅で待ち合わせすんのナシにしよ」



佐野は、ちらっとこっちを見る。



「なんで?」


「なんででも」


「ふーん」



ちょっとだけ機嫌の悪い佐野を横目で見ながら、なんでか気分がいい。