俺様エリートマーケッターの十年愛〜昔両思いだったあの人が、私の行方を捜してるそうです〜

 ――昼食は駅構内にあるイタリアンレストランで取った。

 その間、翔は先ほどの強引な態度はなんだったのか、今後の仕事についての話題か他愛ない世間話しかしなかった。

(私の……気のせいだったのかな?)

 こちらが意識しすぎていたから、少しばかり強引な態度が俺様に見えたのかもしれない。翔としては単に同じプロジェクトの仲間として、他部署の社員と親交を深めようと思っただけで。

(そうだよね。一瞬私だってバレたのかと思った……)

 美波はほっと胸を撫で下ろした。

 ――その後食事を終えた二人は、並んでイダテン本社に戻ることになった。並木道を歩きながら、何気なく雑談を交わす。

 美波は翔に気付かれないよう、数歩遅れて歩くことで距離を取った。翔は人目を引く魅力的な男性だ。

 すれ違った女性は皆彼をチラリと見るし、「あの人かっこいいね」「モデル?」などと口に出す二人連れもいる。

 十年前――十九歳の翔はまだ少年っぽかった。元々は明るく真っ直ぐ、かつ少々短気な気質も相まって、ヤンチャに見えることもあった。

 だが、今は社会人らしく落ち着き、どこか影を帯びて、大人の男性の雰囲気がある。

 こんなに地味で冴えない自分が、隣を歩くのは気が引ける。

「入江さんは四年目なんですか」

 翔が何気ない口調で尋ねる。

「はい。早生まれなので先月二十五歳になりました」

「……四歳も年下だったのか」

 驚いたような翔の様子に、美波は自分はそんなに老けて見えるのかと、ちょっと不安になってしまった。