――マーケティング部オフィスは、社員のデスクと旧会議室が一体化し、アンバランスな横長の長方形になっている。
改装でよりオープンに、より効率よくを追求させた結果こうなったらしい。確かに奥行きがあって開放感がある。
デスクも椅子もまだ傷や汚れはなく、パソコンは一人に付き二台支給されていた。
さすが、花形部署の一つであるだけあって、会社のオフィスへの力の入れようも違う。
おしゃれなガラスのドアの横には電話機が設置されていた。オフィスが広過ぎるので、近くに人がいなかった場合、これで呼び出すことになっている。
だが、今日はそんな必要もなかった。ある男性がすぐに美波に気付き、真っ直ぐにやって来たからだ。
――翔だった。
マーケティング部オフィスでも一際目立っている。
目を瞬かせる美波の前で立ち止まる。その間美波から一度も視線を外そうとしなかった。
「入江美波さん――でしたね」
美波は息を呑んで翔を見上げた。
食い入るような眼差しにたじろぐ。
(私、何か気に障ることをしたのかしら?)
そう思いつつも仕事だけはしなければと、恐る恐るファイルを差し出した。
「は、はい……。あの、部長から資料を預かっております。こちらをどうそ。まだ内密なので、共有はしないでとのことです」
「……」
「サインが必要なので、右端にお願いします」
翔は資料を受け取り、再び美波をじっと見つめた。
改装でよりオープンに、より効率よくを追求させた結果こうなったらしい。確かに奥行きがあって開放感がある。
デスクも椅子もまだ傷や汚れはなく、パソコンは一人に付き二台支給されていた。
さすが、花形部署の一つであるだけあって、会社のオフィスへの力の入れようも違う。
おしゃれなガラスのドアの横には電話機が設置されていた。オフィスが広過ぎるので、近くに人がいなかった場合、これで呼び出すことになっている。
だが、今日はそんな必要もなかった。ある男性がすぐに美波に気付き、真っ直ぐにやって来たからだ。
――翔だった。
マーケティング部オフィスでも一際目立っている。
目を瞬かせる美波の前で立ち止まる。その間美波から一度も視線を外そうとしなかった。
「入江美波さん――でしたね」
美波は息を呑んで翔を見上げた。
食い入るような眼差しにたじろぐ。
(私、何か気に障ることをしたのかしら?)
そう思いつつも仕事だけはしなければと、恐る恐るファイルを差し出した。
「は、はい……。あの、部長から資料を預かっております。こちらをどうそ。まだ内密なので、共有はしないでとのことです」
「……」
「サインが必要なので、右端にお願いします」
翔は資料を受け取り、再び美波をじっと見つめた。

