――それから数日後、マーケティング企画部門のミーティングに呼び出され、改めて翔を初めとする関係者らと顔合わせをすることになった。
「営業関係者のアイデアが採用されたのはこれが初めてなんだよ」
企画部門の課長はしみじみと頷いた。課長に合わせて社員もうんうんと頷く。
「この仕事に慣れてくると、つい捻ったもの、尖った要素を入れたくなるんですけど、入江さんは一般の消費者に近い立ち位置にいるからですかね。ああー、こういう素直な女性の視点って今までなかったなって感心して」
「待て待て。高橋君の案も入江さんと被っているんだからな。女性目線ってわけじゃないと思うぞ」
「そうでした、高橋君、ごめんごめん。うん、でもやっぱりこのコンセプトはいいな。“人は一人でも歩いていける。でも、そんな時代だからこそ、君と一緒に同じ道を行きたい”」
美波がまず驚いたのは、翔と自分のアイデアが被っていただけではない。コンセプトととして何気なく書いた一文が、ほとんど違っていなかったことだった。
採用されたアイデアは翔に手伝われた書いたものではないので、本当に今回被ったのは偶然ということになる。
「高橋君、この”君“ってやっぱり恋人のこと?」
「俺はそうですね。入江さんは?」
隣の席から声を掛けられ、美波の心臓がドキリと跳ねた。翔の切れ長の目がじっとこちらを見つめているのを感じる。
「私は……そうですね。限定しなかったつもりなんですけど、私もやっぱり好きな人って設定です」
翔にいつか語ったささやかな夢――。
『知っていた? 翔君の病室からも海が見えるの。青灰色の静かな海……。あの海を翔君と一緒に見に行ってみたい。砂浜を歩いて、波の音を聞いて……』
――その時履くシューズをイメージした。そして、翔もお揃いの靴を履いていてくれたら嬉しいなと。
「この“君”は恋人に限定しないで、親子や友だちでもいいよな。ジュニアやキッズ向けにも展開できるし」
「あー、それいいですね」
議論が進む中でも翔はまだ自分を見つめている。
(どうしてそんなに私を見るの?)
心が落ち着かない。
結局翔は話し合いの間中、美波から目を離そうとしなかった。
「営業関係者のアイデアが採用されたのはこれが初めてなんだよ」
企画部門の課長はしみじみと頷いた。課長に合わせて社員もうんうんと頷く。
「この仕事に慣れてくると、つい捻ったもの、尖った要素を入れたくなるんですけど、入江さんは一般の消費者に近い立ち位置にいるからですかね。ああー、こういう素直な女性の視点って今までなかったなって感心して」
「待て待て。高橋君の案も入江さんと被っているんだからな。女性目線ってわけじゃないと思うぞ」
「そうでした、高橋君、ごめんごめん。うん、でもやっぱりこのコンセプトはいいな。“人は一人でも歩いていける。でも、そんな時代だからこそ、君と一緒に同じ道を行きたい”」
美波がまず驚いたのは、翔と自分のアイデアが被っていただけではない。コンセプトととして何気なく書いた一文が、ほとんど違っていなかったことだった。
採用されたアイデアは翔に手伝われた書いたものではないので、本当に今回被ったのは偶然ということになる。
「高橋君、この”君“ってやっぱり恋人のこと?」
「俺はそうですね。入江さんは?」
隣の席から声を掛けられ、美波の心臓がドキリと跳ねた。翔の切れ長の目がじっとこちらを見つめているのを感じる。
「私は……そうですね。限定しなかったつもりなんですけど、私もやっぱり好きな人って設定です」
翔にいつか語ったささやかな夢――。
『知っていた? 翔君の病室からも海が見えるの。青灰色の静かな海……。あの海を翔君と一緒に見に行ってみたい。砂浜を歩いて、波の音を聞いて……』
――その時履くシューズをイメージした。そして、翔もお揃いの靴を履いていてくれたら嬉しいなと。
「この“君”は恋人に限定しないで、親子や友だちでもいいよな。ジュニアやキッズ向けにも展開できるし」
「あー、それいいですね」
議論が進む中でも翔はまだ自分を見つめている。
(どうしてそんなに私を見るの?)
心が落ち着かない。
結局翔は話し合いの間中、美波から目を離そうとしなかった。

