思わず伏せていた顔を上げる。
「何よ、その顔。どうせ事務程度しかやっていないんでしょ。あんた一人抜けたくらいでどうってことないわよ」
「……そういう、問題じゃない」
何ヶ月もこのプロジェクトに関わってきたし、二年後にリリースされるだろう新シリーズの商品をこの目で見てみたい。たとえ事務程度の仕事だとしても、何年もその仕事をやってきたというプライドもある。
「私、プロジェクトを辞退しないし、会社も辞めない」
「はあ? 何よ、あんた私の言うことを聞けないって言うの?」
「……」
美波は真っ直ぐに茉莉を見据えた。
姉に正面を切って反抗するのは初めてかもしれない。以前の怖くて頷くしかなかったが、胸の奥から込み上げてくる熱が、茉莉への恐怖をも焼き払ってしまっていた。
「な、何よその目」
茉莉は目を瞬かせて一歩後ずさった。
「美波のくせに!」
「確かに私は高橋さんと姉さんの関係に何も言う権利はない」
ぐっと腹に力を込めて宣言する。
「でも、仕事だけは絶対に譲れない。事務だって必要な仕事よ」
脳裏に抜擢された際の三井からの激励、プロジェクトに関わる同僚たちの声が蘇る。
『君がよく気が付いて、きちんとした社員だからだよ。そんなこと当たり前だって思うだろう? それが、全然当たり前じゃないんだな。これができる社員は老若男女問わず意外にいない』
『私なんて細々したことが苦手だから、入江さんがいなかったら大変でしたよ』
最後に、翔の一言を噛み締めた。
『でも、それがあんたのいいところなんだろうな』
「――姉さんに私の仕事を奪う資格はない」
反撃されることなど予想もしていなかったのだろうか。茉莉は呆然と美波を見つめていたが、やがて我にかえってギリリと視線を鋭くした。
「……後悔することになるわよ」
「絶対にしない」
すぐさまそう言い返すと、それ以上何も言えなくなったのだろうか。茉莉はフンと鼻を鳴らして身を翻した。
「何よ、その顔。どうせ事務程度しかやっていないんでしょ。あんた一人抜けたくらいでどうってことないわよ」
「……そういう、問題じゃない」
何ヶ月もこのプロジェクトに関わってきたし、二年後にリリースされるだろう新シリーズの商品をこの目で見てみたい。たとえ事務程度の仕事だとしても、何年もその仕事をやってきたというプライドもある。
「私、プロジェクトを辞退しないし、会社も辞めない」
「はあ? 何よ、あんた私の言うことを聞けないって言うの?」
「……」
美波は真っ直ぐに茉莉を見据えた。
姉に正面を切って反抗するのは初めてかもしれない。以前の怖くて頷くしかなかったが、胸の奥から込み上げてくる熱が、茉莉への恐怖をも焼き払ってしまっていた。
「な、何よその目」
茉莉は目を瞬かせて一歩後ずさった。
「美波のくせに!」
「確かに私は高橋さんと姉さんの関係に何も言う権利はない」
ぐっと腹に力を込めて宣言する。
「でも、仕事だけは絶対に譲れない。事務だって必要な仕事よ」
脳裏に抜擢された際の三井からの激励、プロジェクトに関わる同僚たちの声が蘇る。
『君がよく気が付いて、きちんとした社員だからだよ。そんなこと当たり前だって思うだろう? それが、全然当たり前じゃないんだな。これができる社員は老若男女問わず意外にいない』
『私なんて細々したことが苦手だから、入江さんがいなかったら大変でしたよ』
最後に、翔の一言を噛み締めた。
『でも、それがあんたのいいところなんだろうな』
「――姉さんに私の仕事を奪う資格はない」
反撃されることなど予想もしていなかったのだろうか。茉莉は呆然と美波を見つめていたが、やがて我にかえってギリリと視線を鋭くした。
「……後悔することになるわよ」
「絶対にしない」
すぐさまそう言い返すと、それ以上何も言えなくなったのだろうか。茉莉はフンと鼻を鳴らして身を翻した。

