その時のトラウマは凄まじく、以降美波は髪型だけではなく、茉莉と被りそうなものはすべて避けるようになった。
茉莉はフェミニンなものが好きだったので、必然的にスカートやワンピースは着なくなる。メイクなどもっての他だった。
美波は次自分に女の子らしさを禁じた。そしてますます地味で、陰気で、自信がない性格になっていったのだ。
今まで思い出さずにいたのは、心の傷が深かったからこそ、防衛本能が働いたのだろう。
「――美波、聞いているの。髪、切ってきなさいよね。そのメイクも何よ、気取っちゃって。全然似合っていないわよ」
「……」
ぐっと拳を握り締める。
心の中でもう一人の自分が――ナツが『あなたはどうしたいの?』と聞いてくる。
翔が好きになった明るく元気な女の子ならどう答えるのか。
「……ううん。切らない。私もずっと長くしたかったから、このまま伸ばすつもり」
美波が逆らうなどとは思いもしていなかったのだろう。綺麗にメイクを施した茉莉の目が、みるみる般若のように吊り上がる。
「美波のくせに……」
「姉さん、私はもう成人した大人なの。自分の自由にする権利があるの」
途中、ふと浮かんだ疑問を口にする。
「姉さん、どうしていつも私を貶めようとするの?」
茉莉の方が美人で、勉強ができて、人気者――そんなことは皆わかっているだろうに、なぜわざわざ妹を下に置こうとするのか。
「――うるさいっ」
茉莉がこうも感情的に、しかも怒声を上げたのは初めてだった。
「美波のくせに! あんたは私に従っていればいいのよ!」
「……」
不思議なことに、茉莉が怒れば怒るほど、心は冷静になっていく。
しかし、次の茉莉のセリフにはその場で凍り付いてしまった。
「あんたが髪を伸ばそうが、メイクをしようが、高橋さんに手が届くはずないでしょ」
なぜ翔への好意を見破られたのか――。
美波の動揺を見て取ったのだろう。茉莉は薄ら笑いを浮かべた。
「私に隠しておけると思っていた? あんた、ずっと高橋さんを見ていたでしょう。ほんと、身の程知らずよね。あんたみたいな地味な女を高橋さんが好きになるわけないじゃない」
「……っ」
「それに、残念だったわね。彼はもう私のものだから」
翔と付き合うことになったのだと、茉莉は自慢げに微笑んだ。
茉莉はフェミニンなものが好きだったので、必然的にスカートやワンピースは着なくなる。メイクなどもっての他だった。
美波は次自分に女の子らしさを禁じた。そしてますます地味で、陰気で、自信がない性格になっていったのだ。
今まで思い出さずにいたのは、心の傷が深かったからこそ、防衛本能が働いたのだろう。
「――美波、聞いているの。髪、切ってきなさいよね。そのメイクも何よ、気取っちゃって。全然似合っていないわよ」
「……」
ぐっと拳を握り締める。
心の中でもう一人の自分が――ナツが『あなたはどうしたいの?』と聞いてくる。
翔が好きになった明るく元気な女の子ならどう答えるのか。
「……ううん。切らない。私もずっと長くしたかったから、このまま伸ばすつもり」
美波が逆らうなどとは思いもしていなかったのだろう。綺麗にメイクを施した茉莉の目が、みるみる般若のように吊り上がる。
「美波のくせに……」
「姉さん、私はもう成人した大人なの。自分の自由にする権利があるの」
途中、ふと浮かんだ疑問を口にする。
「姉さん、どうしていつも私を貶めようとするの?」
茉莉の方が美人で、勉強ができて、人気者――そんなことは皆わかっているだろうに、なぜわざわざ妹を下に置こうとするのか。
「――うるさいっ」
茉莉がこうも感情的に、しかも怒声を上げたのは初めてだった。
「美波のくせに! あんたは私に従っていればいいのよ!」
「……」
不思議なことに、茉莉が怒れば怒るほど、心は冷静になっていく。
しかし、次の茉莉のセリフにはその場で凍り付いてしまった。
「あんたが髪を伸ばそうが、メイクをしようが、高橋さんに手が届くはずないでしょ」
なぜ翔への好意を見破られたのか――。
美波の動揺を見て取ったのだろう。茉莉は薄ら笑いを浮かべた。
「私に隠しておけると思っていた? あんた、ずっと高橋さんを見ていたでしょう。ほんと、身の程知らずよね。あんたみたいな地味な女を高橋さんが好きになるわけないじゃない」
「……っ」
「それに、残念だったわね。彼はもう私のものだから」
翔と付き合うことになったのだと、茉莉は自慢げに微笑んだ。

