俺様エリートマーケッターの十年愛〜昔両思いだったあの人が、私の行方を捜してるそうです〜

 ――美波の母、緑の実家は東京都の隣県K県K市にあり、現在は伯母薫が婿を取って後を継いでいる。祖母の面倒も彼女が同居して見ていた。

 亡くなった祖母の通夜と通夜、及び告別式は、同市内のメモリアルホールで開催されることになり、美波が到着すると喪主である薫が出迎えてくれた。

「伯母さん、お久しぶりです」

「あら、茉莉ちゃん来るの明日じゃ……って、えっ、美波ちゃん? ええっ」

 薫は目を瞬かせた。

「びっくりした……。ごめんなさいね。髪が伸びたから? それともお化粧のせいかしら。こうして見るとあなたたち、顔立ちもよく似ていたのね。どうして気付かなかったのかしら」

 美波もまた驚いた。薫にまで茉莉に似ている、更に見間違えたとまでと言われるとは思わなかったからだ。声はともかくとして、今まで容姿を言及されたことなどなかったのに。

 伯母の薫は十年前の翔のように目が見えないわけでない。自分たち姉妹のことをよく知っているのに。

「そうでしょうか。あの、両親と姉は……」

「緑は来たけど衛さんは欠席だそうよ。今海外に出張中で帰ってこれないんですって。茉莉ちゃんは仕事で明日の告別式だけ来るって」

 衛とは父の名前である。義母の葬儀に出ない夫など聞いたことがないし、第一衛は海外など関係ない部署に所属していたはずだ。何か嘘を吐かねばならない理由があるのだろうか。

「母はどこですか」

「控室よ。他の皆もいるわ」

「じゃあ、もう来ている人に挨拶して来ます」

 美波は薫に礼を言ってそこに向かった

 ――伯母だけではない。美波が足を踏み入れるなり、茶を飲んでいた年配の親族は皆、「ええっ、美波ちゃんなのかい?」と目を見開いた。

「見違えたよ。一瞬茉莉ちゃんかと。何年ぶりだい? 今いくつなの」

「二十五です」

「早いなあ。最後に会ったのは高校生くらいだったっけ。いやあ、本当に綺麗になったなあ」

 薫の一人息子であり、一回り上の従兄が感心したように頷く。続いてその妻が興味津々と言ったように聞いてきた。

「今どこに勤めているの」

「イダテンって言うスポーツ用品メーカーです」

「ええっ、前テレビのCMで見たよ」

「上場企業じゃなかったか? たいしたものだ」

「でも、美波ちゃん、頭よかったものね。確か国立のK大でしょ」

 親族の中では一番若いからだろうか。すっかり話題の中心になってしまう。皆に取り囲まれてしまったために、奥の席に母がいるのにまったく気付かなかった。

「緑さん、水くさいじゃないか。美波ちゃんがこんなに美人になって、おまけに出世していたなんて知らなかったよ」

 親族の一人が視線を向け、話を振ったので、ようやくはっとする。

「お母さん……」