とはいえ、なるべく長引かせないために、一時間後には引き摺ってでも帰すと宣言する。
「ダラダラやっているから逆に終わらないんだ。今から一時間で終わらせると決めて取りかかれ」
「わ、わかった……」
美波は再びパソコンの画面に向かった。
「高橋さんは遅くなって大丈夫なの? もし彼女を待たせていたら悪いし」
胸の奥がズキリと痛む。
あれから茉莉との間にどんな遣り取りがあり、どこまで進展したのかまったく知らない。
(でも……姉さんと……何か約束があるのなら……)
「――彼女なんていない」
「えっ」
思わず翔の横顔に目を向ける。
翔は前を向いたまま、「ずっといなかったよ」と呟いた。
「昔は彼女もいたし、それなりに遊んでもいたけど、もうそんな気になれないから」
翔の目はここではない、はるかに遠い場所を見つめているように見えた。美波はその眼差しに惹き付けられたが、すぐに我に返って「何を考えているの」と自分を叱咤した。
(一瞬、まだフリーなんだってほっとしちゃった……)
まだ茉莉と付き合ってはいないようだが、これからどうなるのかはわからない。少なくとも、今茉莉が一番翔の近いところにいるのは確かなのだから。
醜い自分の感情をごまかそうと笑みを浮かべる。
「そうなんだ。私も似たようなものだよ」
「彼氏、今いないのか」
「今というか……私高橋さんみたいにモテないから。男の人と付き合ったことが一度もないの」
見栄を張っても仕方がないので正直に打ち明ける。
「嘘だろ」
即座にそうツッコまれ、大人しい美波もさすがにムッとした。
「こんなこと嘘言ってどうするの」
「いや、あんたみたいな女に男が言い寄らないはずないだろ。……あんた、鈍いだろ。好かれても気付かなかっただけじゃないか。でも、そうか。男いたことないのか……」
鈍いと言われてますますムッとしていまう。
「もう、お世辞は結構です。自分のことは自分で一番よくわかってるので」
「……」
翔はまじまじと美波を見つめていたが、やがてぷっと噴き出し、「あんた、やっぱり面白い女だな」と呟いた。
どこかで聞いたことがあるようなセリフだった。
「どうして笑うんですか」
「いや、怒った顔初めて見たから。……こんな顔するんだなって思って」
人の怒った顔の何が面白いのだろう。
「だって、面白いって褒め言葉じゃないもの」
「……」
翔の眼差しがふと優しいものになる。
それを見た美波の心臓がドキリと跳ねた。
「なら、なんて言ってほしかった?」
「ダラダラやっているから逆に終わらないんだ。今から一時間で終わらせると決めて取りかかれ」
「わ、わかった……」
美波は再びパソコンの画面に向かった。
「高橋さんは遅くなって大丈夫なの? もし彼女を待たせていたら悪いし」
胸の奥がズキリと痛む。
あれから茉莉との間にどんな遣り取りがあり、どこまで進展したのかまったく知らない。
(でも……姉さんと……何か約束があるのなら……)
「――彼女なんていない」
「えっ」
思わず翔の横顔に目を向ける。
翔は前を向いたまま、「ずっといなかったよ」と呟いた。
「昔は彼女もいたし、それなりに遊んでもいたけど、もうそんな気になれないから」
翔の目はここではない、はるかに遠い場所を見つめているように見えた。美波はその眼差しに惹き付けられたが、すぐに我に返って「何を考えているの」と自分を叱咤した。
(一瞬、まだフリーなんだってほっとしちゃった……)
まだ茉莉と付き合ってはいないようだが、これからどうなるのかはわからない。少なくとも、今茉莉が一番翔の近いところにいるのは確かなのだから。
醜い自分の感情をごまかそうと笑みを浮かべる。
「そうなんだ。私も似たようなものだよ」
「彼氏、今いないのか」
「今というか……私高橋さんみたいにモテないから。男の人と付き合ったことが一度もないの」
見栄を張っても仕方がないので正直に打ち明ける。
「嘘だろ」
即座にそうツッコまれ、大人しい美波もさすがにムッとした。
「こんなこと嘘言ってどうするの」
「いや、あんたみたいな女に男が言い寄らないはずないだろ。……あんた、鈍いだろ。好かれても気付かなかっただけじゃないか。でも、そうか。男いたことないのか……」
鈍いと言われてますますムッとしていまう。
「もう、お世辞は結構です。自分のことは自分で一番よくわかってるので」
「……」
翔はまじまじと美波を見つめていたが、やがてぷっと噴き出し、「あんた、やっぱり面白い女だな」と呟いた。
どこかで聞いたことがあるようなセリフだった。
「どうして笑うんですか」
「いや、怒った顔初めて見たから。……こんな顔するんだなって思って」
人の怒った顔の何が面白いのだろう。
「だって、面白いって褒め言葉じゃないもの」
「……」
翔の眼差しがふと優しいものになる。
それを見た美波の心臓がドキリと跳ねた。
「なら、なんて言ってほしかった?」

