――その夜、美波はまんじりともせずに、ベッドの中で繰り返し寝返りを打った。
(姉さんは何を考えているの?)
”ナツ”を名乗ってどうするつもりなのか。
翔を気に入っていたところからして、彼に近付く手段にしようとしているのか。
(……)
ぎゅっと固く目を閉じる。
(姉さんが翔君とどうなろうと、私には何も言う資格はない)
それに、「ナツ」のイメージはあの頃の自分より茉莉に近いとも思う。
美人で、朗らかで、蝶のように自由に見えながら、しっかり勉強はできる頭のいい子だ。
(翔君だって納得しているだろうし……きっとこの方がいいんだわ)
だが、心の中の「ナツ」が――もう一人の自分が「本当にそれでいいの?」と語りかけてくる。
『それがあなたの本心? 後悔しない? 今だって彼のことが好きなんじゃないの? 嫌われるのが怖いって、結局恋心の裏返しでしょう?』
その通りだった。今だって翔を見かけるたびに心惹かれずにはいられない。
十年前よりずっと素敵になったからだけではない。あの青灰色の逆境から這い上がり、新たな未来を掴んだ強さが眩しかった。
(後悔なんて……)
『翔にありのままの自分を見せるのがそんなに嫌? ありのままのあなたは……あなたが思っているようなあなたなのかしら?』
(わからない……)
もう二十五歳にもなったのに、心は十五歳の頃の自信のない自分のままだ。
『本当に? 十年間何も変わらずに生きてきたの? ……変わろうとしなかったの?』
思わず耳を塞いだが、「ナツ」は自分自身なのだ。止めようもない。
(ああ、そうだった。私、こうやってずっと自分の本心に耳を塞いできたんだ。どうせ叶わない。だったら最初から諦めた方がいいって)
だから、思うがままに振る舞う「ナツ」という女の子を作り上げた。
だが、ずっと自分を押し殺して生きてきただけに、今更どうやって変わればいいのかもわからなかった。
(姉さんは何を考えているの?)
”ナツ”を名乗ってどうするつもりなのか。
翔を気に入っていたところからして、彼に近付く手段にしようとしているのか。
(……)
ぎゅっと固く目を閉じる。
(姉さんが翔君とどうなろうと、私には何も言う資格はない)
それに、「ナツ」のイメージはあの頃の自分より茉莉に近いとも思う。
美人で、朗らかで、蝶のように自由に見えながら、しっかり勉強はできる頭のいい子だ。
(翔君だって納得しているだろうし……きっとこの方がいいんだわ)
だが、心の中の「ナツ」が――もう一人の自分が「本当にそれでいいの?」と語りかけてくる。
『それがあなたの本心? 後悔しない? 今だって彼のことが好きなんじゃないの? 嫌われるのが怖いって、結局恋心の裏返しでしょう?』
その通りだった。今だって翔を見かけるたびに心惹かれずにはいられない。
十年前よりずっと素敵になったからだけではない。あの青灰色の逆境から這い上がり、新たな未来を掴んだ強さが眩しかった。
(後悔なんて……)
『翔にありのままの自分を見せるのがそんなに嫌? ありのままのあなたは……あなたが思っているようなあなたなのかしら?』
(わからない……)
もう二十五歳にもなったのに、心は十五歳の頃の自信のない自分のままだ。
『本当に? 十年間何も変わらずに生きてきたの? ……変わろうとしなかったの?』
思わず耳を塞いだが、「ナツ」は自分自身なのだ。止めようもない。
(ああ、そうだった。私、こうやってずっと自分の本心に耳を塞いできたんだ。どうせ叶わない。だったら最初から諦めた方がいいって)
だから、思うがままに振る舞う「ナツ」という女の子を作り上げた。
だが、ずっと自分を押し殺して生きてきただけに、今更どうやって変わればいいのかもわからなかった。

