俺様エリートマーケッターの十年愛〜昔両思いだったあの人が、私の行方を捜してるそうです〜

 その後会食は和やかに進み、時折席を異動して全員が親睦を深めた。茉莉も全員に愛想よく挨拶して回っている。

 美波は茉莉が気になりはしたものの、三井部長代理として来ているのだ。私事よりもしっかり勤めをこなせと自分に言い聞かせた。

(さっきの磯野さんたちの言葉がお世辞でもいい。信頼されているのなら、その信頼を守りたい)

 そのために酒は最低点に留め、専門店営業本部に関する質問をされた時には、抜かりなく答えられるよう気を張った。

「去年のあのホール借り切ったイベント、入江さんも手伝っていたのか」

「はい。人手不足で駆り出されたんです」

「随分詳しいはずだよ。なるほど、それでわかった。営業事務の人が企画のプロジェクトに直接関わるのって珍しいんだよ。そこでの働きが評価されたんだろうな」

 会食前にプロジェクトの資料をチェックし直し、関連項目もあらかた頭に叩き込んできてよかったと思った。これで少しは三井部長の顔を立てられただろうか。

 束の間解放され自分の席に戻ったのだが、先ほどまで隣席にいた翔の姿がない。

 自分と同じように誰かと歓談しているのだろうか――そう考え何気なく室内を見回してはっとした。

 隅の席で翔と茉莉が並んで腰を下ろしている。

 それほど広くない部屋だからか、二人の会話が嫌でも耳に入ってしまった。

「――私もヘッドハンティングされて、いい機会だからって今の会社に来たんです。前いたところは大手だった分、仕事が細分化されて自分がメインでできる仕事が少なくて」

「俺も同じですね。やりたい仕事をやらせてもらえなくて、やらせてもらえるにしても何年後かわからないと思ったから、イダテンから話をもらって即決しました」

 姉の目は翔から離れない。彼を気に入ったのだと一目で見て取れた。

 それから二人はしばらく雑談していたが、あるタイミングでふと翔が黙り込み、「聞きたいことがあるんです」と話を切り出した。

「話? なんですか?」

「ここではちょっと」

「……」

 茉莉の目がキラリと輝いた。

「じゃあ、二人で抜け出す? 近くにいいバーがあるの。どうせ皆酔ってしまったから気付かないわ。後で連絡すれば大丈夫よ」