俺様エリートマーケッターの十年愛〜昔両思いだったあの人が、私の行方を捜してるそうです〜

 イダテンの社員が口々に頷き合う。

「いや、事務をメインで担当してもらっていますが、仕事が早い上に丁寧でノーミスです」

 美波は驚いて目を瞬かせた。

「むしろ、よく助けられています」

「私なんて細々したこと苦手だから、入江さんがいなかったら大変でしたよ」

 美波は胸が熱くなるのを感じた。

(皆……そんな風に思ってくれていたんだ……)

 幹事の磯野もうんうんと頷く。

「そうそう。そうなんですよ。三井部長も入江さんなら信頼できるって言っていたなあ」

「……」

 なぜか茉莉が一瞬眉を顰める。しかし、数秒後には「美波も成長したのね」と姉らしい言葉をかけてきた。

「しっかりやれているなら安心したわ」

「いやあ、それにしても」

 磯野は再び美波と茉莉を見比べた。

「きょうだいだけあって似ていますね」

「……」

 茉莉の表情がひくりと強張る。だが、すぐに笑みを浮かべた。

「……そうですか? 昔から声は似ているって言われていたんですが」

「声もそうですけど、顔立ちとか。美人姉妹ですよね。綺麗系と知的系って感じで。あっ、まずい。今の時代にはセクハラになるのか」

「でも、こっちの入江さんが知的系ってわかりますよ。私も初めて会った時頭よさそうって思いましたもん」

「入江さん、出身大学ってどこだったっけ?」

「は、はい。Y大の経済学部です」

 皆が「おー」と声を上げた。

「国立ってすごいじゃないか。あそこの経済学部レベル結構高いだろう」

「三井部長って入江さんを育てるつもりなのかもしれませんね。じゃないとプロジェクトに参加させないでしょうし」

「だな。違いない」

 美波は目を瞬かせた。

 昔はどれだけ自分を見てほしいと頑張っても、茉莉と比べられて呆れられるだけだったのに。

「お姉さんの入江さんは……」

「……私はK大です」

「おー。じゃあ、同じくらいの学力だったんだ」

「やっぱり血が繋がっていると似るんですね」

「んなことないぞ。俺の弟は俺と違ってイケメンでモテモテで、昔から兄貴としての立場がなくてさあ……」

 皆わいわい盛り上がる。茉莉も雰囲気に合わせて笑っていたが、不意に鋭い視線を美波に向けてきた。

 美波には茉莉が何を言いたいのかがすぐにわかった。

『――いい気になるんじゃないわよ』