冬の光にヴェールは要らない

別に杏香にいつも嘘をついている訳じゃない。

本心を見せていないだけ。深く踏み込んで来ないようにしているだけ。

でも、それは嘘をついているのかもしれない。
 
だって杏香はクラスが変わっても、卒業しても、私と友達でいるつもりかもしれない。

そんな感情を読みたられたかと思うほど、次の杏香の発言は私の胸に刺さった。

「仕方ないなぁ。じゃあ大学生になって私が一人暮らし始めたら、万桜を招待して洋食を振る舞ってあげる。カルボナーラにしようかなぁ」

 
そういう意味じゃない。分かっている。
 
杏香は私を責めている訳じゃない。
 
それでも、何故か先ほどの壮矢の言葉と今の杏香の言葉が交互に頭に流れていく。


『嘘つきで良いよ。でも、離れないで』


『もー! 嘘つかないでよ!』


駄目だ、杏香の言葉の方に頭が支配される。

私は壮矢との会話をもう一度頭に流した。

『隠し事があるままでも、嘘をついたままでも、いま僕と万桜が話していること全てが嘘なわけじゃない。この繋がりが悪いわけじゃない』

大丈夫。大丈夫だから。

自分に都合の良い言葉を思い出して、心を落ち着けようとしてしまう。