冬の光にヴェールは要らない

放課後、海に向かうと珍しく壮矢と拓人くんはまだ来ていなかった。
 
しかし壮矢の言葉を考えると、水曜日である今日に来ることはほぼ確定だろう。

もし来れなかったら、SNSアカウントのDM機能でメッセージの一つくらい送るだろうし。
 
私は堤防についている階段に腰掛けて、海を眺めながら壮矢と拓人くんを待つ。

人気(ひとけ)のない冬場の海にこんなに頻繁に来るようになると思っていなかった。

「万桜」

後ろから声をかけられて、私はパッと振り返った。
 
しかし、後ろにいたのは壮矢だけだった。拓人くんがいない。

「拓人くんは?」

「今日は拓人のことは母さんが見てくれているから」

「拓人くんがいないのに海に来てくれたの?」

「だって、あの言い方だったら万桜は絶対に水曜に来るはずだし。それに僕は用事がなかったから」

そして、壮矢が当たり前のように私の隣に座る。