冬の光にヴェールは要らない

水曜日、私のバッグには壮矢の英語の教科書が入っていた。
 
壮矢の高校と私の高校は別だが使っている教科書は同じなので、今の私のスクールバッグには同じ英語の教科書が二冊入っている。

だから英語の授業の時に一旦二冊まとめて出してしまった。

「あれ、なんで英語の教科書二冊持ってんの?」

ふと隣の席の男子生徒にそう聞かれた。

「あー……知り合いのを間違えて持ってきちゃったっぽい」

咄嗟についた嘘に、男子生徒の視線が私の英語の教科書に移る。

裏向きになっている教科書には「笹原 壮矢」と書かれていた。