冬の光にヴェールは要らない

「ま、いっか。どうせ万桜としか通信しないだろうし」

「え、オンラインで知らない人とも遊べるよ?」

「うーん、まだ慣れてないから怖いし。元から万桜と遊びたくて買ったみたいなものだから」

杏香は当たり前のようにそう話す。

可愛いツインテをしている杏香の隣に並んでいる私のキャラは普段の私と同じでボブの髪型。

無意識にどこか現実の自分に合わせていた。

「じゃあ、私も髪型をロングストレートに変えようかな」

「いいじゃん!」

「実はちょっと憧れだったんだよね」

「えー、リアルでもすれば良いのにー!」

「そんなすぐに髪が伸びるわけないでしょ」

ツインテの杏香とロングストレートの私のキャラクターが並ぶと、さらに現実感がなくなって楽しくなってしまう。

ゲームはキャラクターデザインと初期設定しか終わっていないのに、時間はだいぶ経っている。

「今日はここでやめとこっか。明日から本格始動ってことで」

杏香の言葉に私も賛同する。

「ゆっくりやっていこう。時間は沢山あるんだし!」

 そう続いた杏香の言葉にいつもならすぐに頷けないはずなのに、私はゲーム内のスタンプで「OK!」と押してしまう。

ロングストレートの髪型をした自分のキャラクターから大きくスタンプが表示される。

それが何故か嫌に感じなかった。