冬の光にヴェールは要らない

隣で光ったスマホの画面には、杏香から「もうすぐ電話出来そう」とメッセージが入っている。
 
分かっている。

世界には悪い人ばかりではないと。

そして、杏香も良い人だと心から思っている。

それでも、私は自分が傷つかないために人に期待することを辞めたのだ。

隣で鳴り始めたスマホを手に取る。

ワンコールで電話に出れる距離にいたのに、私はすぐに電話に出ることが出来ず、無駄に暫く着信音を聞いていた。