冬の光にヴェールは要らない

「あ! 万桜お姉ちゃんだ!」

拓人くんが私に気付き、こちらまで走ってくる。

いつもなら私からも近づくのに、そんなことも出来なくてただただその場で待っていた。

拓人くんが私の近くまで走ってきて私の顔を見ると、何故か走るスピードをさらに上げた。

「万桜お姉ちゃん、なんで泣いているの!? 転んだの?」

「え……?」

拓人くんの言葉で私は頬に手を触れる。

雫に触れるような違和感のある感触があった。

動揺して泣いていることすら意識していなかったらしい。

私はいつから泣いていたのだろう。

海に来る前から? 壮矢に言い返している時? 

それとも、壮矢に嘘つきでも良いと言われてから?
 
本当は分かっていた。

壮矢の言葉に安心して涙が溢れたこと。

そのことに気づきたくなんてなかっただけだ。