冬の光にヴェールは要らない

「……お、万桜!」

 スマホから顔を上げると、杏香が私の隣に立っている。

「そろそろ移動しないと遅刻しちゃうよ?」

「やば! スマホ見てたら、準備忘れてた! すぐに準備するし、待ってて!」

「万桜って案外抜けてない!?」

机の中に入っている教科書は当たり前に紙だから冷たくて。

冬だから、さらに冷たく感じる。

冷たい教科書と冬の寒さ。

どれだけ寒くても、次の季節は来て。

春の暖かな日差しが差し込むようになる。