冬の光にヴェールは要らない

しかし、青年はそんな私の心情など知らずに続けるのだ。

「また会って下さい」

会いたくなんてない。

それでも、真っ直ぐで誠実に向き合われるとどう言葉を(つむ)げば良いか分からない。

「あの、笹原くん」

その時、私は初めてその青年の名を口にした。

心の中ですら、呼べなかったのに。

距離を置くために無意識に行なっていた行動を認識する。

「壮矢、と呼んで下さい。笹原だと拓人と区別がつかないので」

ああ、駄目だ。

これ以上、この人に私に踏み込ませることを許してはいけない。

それでも、拓人くんが私たちの顔を不思議そうに見上げている。

喧嘩だと思わせたくなかった。

それに拓人くんがどこまで会話を理解しているか分からない。