冬の光にヴェールは要らない

私は拓人くんに手を振りながら、海岸にいる二人に近づいてく。

前に来た時より早い時間帯だから、太陽はまだ夕日にもなっていない。

二人の所まで行った私は、まず拓人くんの前で(かが)んだ。

「拓人くん、こんにちは」

「こんにちは! お姉ちゃん、僕たちに会いに来てくれたの?」

拓人くんがそう言いながら、嬉しそうに青年の方を見上げて共感を求めている。

「前に拓人くんのお兄ちゃんに借りた手袋を返しに来たの」

拓人くんの「僕たちに会いに来てくれた」はそのままの意味で言っている。

ただただ私に会えたことを喜んでくれている。

私のような感情じゃない。

だから、わざと「手袋を返しに来た」と言った。

拓人くんにそんな細かなことが伝わるはずがなくても、拓人くんに嘘をつきたくなかった。