冬の光にヴェールは要らない

高校生なのに、修学旅行も体育祭も文化祭も要らないと思ってしまう。

波がないような……悩みがなくて心の負担がかからないような平坦な毎日を繰り返していたい。

昼休みの時間はいつもより早く感じることも遅く感じることもなく、通常通りのスピード。

違うのは、杏香の話の合間合間に手袋のことがよぎることだけだった。

「万桜ー、苺パフェ! めっちゃ楽しみにしてたんだから」

杏香は昨日話していたカフェに行くことをずっと昼休みも楽しみにしてくれていた。

私も甘いものは好きだし、何より放課後に気軽に遊ぶ時間は嫌いじゃない。

それに二千五百円もするんだから、折角なら楽しみたい。
 
私はスクールバッグのチャックが閉まっているか確認する。

少しだけ上がっていたチャックを、隙間を埋めるように閉じた。
 
うん、一旦手袋のことは忘れよう。

昨日の思い出ごとスクールバッグの中に閉じ込めてしまえば良い。