冬の光にヴェールは要らない

「万桜、おはようー」

机の目の前で声を掛けられるまで杏香がいたことに気づかなかった。

どれだけ私は昨日の出来事に引っ張られているのだろう。

「おはよ! いつもより杏香遅くなかった?」

「そうなの! 雨だから自転車じゃなくてバスで来たから」

「昨日は雪が降ってたのに、バスじゃなかったの?」

「昨日はもう自転車で出た後に雪が降ってきたの。焦った〜。帰りは積もってなくて本気で助かったし」

杏香がスマホを取り出す。スマホで天気予報を確認しているようだった。

「でも午後には晴れるはずだから、昨日言っていたカフェは今日行けそうだよ!」

「やった! 苺パフェ楽しみ」

私との会話の区切りの良いところで杏香が自分の机に荷物を置きに行く。