冬の光にヴェールは要らない

「しかし、頂くわけには……」

「マフラーを二本持っていて、今日は偶然予備の方をつけて来ていたんです。本当にお気になさらないで下さい」

私の言葉が嘘だと伝わってしまっても良い。

嘘だと分かっても人はここまで折れない善意を断ることは難しい。

別に善意ではないのだけれど。

「分かりました。本当にありがとうございます。ここまで拓人を送って下さるだけではなく、マフラーまで……」

その言葉の語尾には「お優しいんですね」とついている気がした。

優しいわけがないのに。


人に本心を見せることが大嫌いで、その場限りの縁を好んでいる私が優しい人である訳がない。


「にしても、風も強くなって来たので寒いですね」

青年が別の会話を始めたことにより、ホッと安心が顔を出したのが嫌でも分かった。