冬の光にヴェールは要らない

拓人くんが青年に抱きついている。

それを青年が受け止めた後に、制服の袖で頬に伝った涙を拭いている。

ハンカチでも渡した方が良いかなと頭によぎったが、使っていない綺麗なハンカチはないし……などと考えているうちに青年は涙を拭き終わっていた。

「拓人、家に帰ったんじゃないの?」

「お兄ちゃんが心配で戻ってきた!」

拓人くんの言葉を聞いた後に、青年は私に視線を向けた。

その時、初めて目が合った。

先ほどまで夕日に照られされ、目を瞑っていた青年の目に私が映っている。
 
頬に涙が伝っていたのだから泣いていたに決まっているのに、目も赤くなっていなくて、どこか先ほどの涙が信じられなくなる。

「貴方が拓人をここまで連れてきて下さったんですか?」

どこか呆気(あっけ)に取られていた私は、その声で現実に引き戻された。波の音もやっと耳に入ってくる。