冬の光にヴェールは要らない

だからこそ考え事をする時間が余計にあって、どこか心がザワザワする。

拓人くんの話だと、拓人くんのお兄ちゃんの元気がなかったという話も気になる。

しかし、拓人くんを急かすわけにはいかない……わかっているけれど……!

「ごめん、拓人くん。やっぱりお姉ちゃんがおんぶしても良いかな?」

「うん! 僕、おんぶ大好き」

拓人くんを背中に乗せて、私は早歩きで海を目指す。

真冬に弟を先に帰して、もう一度海に戻る兄。

嫌な想像しか巡らない。

海岸に向かう石で出来た階段を降りていく。

拓人くんを揺らさないように、出来るだけ急いだ。
 
いつもの私なら交番に送り届けている。