冬の光にヴェールは要らない

「ねぇ、ここからお家と海どっちが近い?」

「分からない。ここどこ?」

男の子の返答を聞く限り、家の場所もどこの海に言っていたかも分からないらしい。

「今日、電車やバスに乗った?」

「ううん」

つまりどちらも歩いていける距離。

しかし、家の場所は分からない。

ならば、ここから一番近い海岸に行くしかない。

確か徒歩五分くらいで着く。

「ねぇねぇ、お名前聞いても良い?」

拓人(たくと)

「じゃあ、拓人くん。お姉ちゃんがお兄ちゃんのところまで連れて行ってあげるから、手を繋いでも良い?」

「うん!」

五歳児の歩くスピードは当たり前だが、高校生の私より遅い。