それから二月も終わり頃になり、寒さは厳しいけれど冬の終わりも近づいてきていた。

あの海にはたまに行くし、壮矢と拓人くんともよく話すけれど、まだ壮矢がなぜ夕日に向かって願っていたのかは聞けなかった。

私が聞いても良いか分からなかった。

踏み込みたいのに踏み込んで良いか分からないということは、こんなに辛いのだと自分が逆の立場になって初めて気づくのだ。

そんなことを教室で考えていると、杏香が私の机の前まで早足で向かってくる。

「万桜ー! 今日の夜にはレストランオープンだからね!」

「はいはい、内装も整ったもんね」

杏香が嬉しそうに今日電話出来る時間をスマホのメモに打ち込んでいる。

「にしても、杏香もゲームにハマってきたね〜」

「万桜の影響ですー」

「あはは、杏香も実はゲーム好きの血が流れていたりして」

私は楽しそうにレストランのメニューについて話している杏香に、「本当に一番目のお客さんは私で良いの?」と問いかけた。