冬の光にヴェールは要らない

梨実と別れてすぐに私は海に戻った。

壮矢と拓人くんが帰る前にもう一度会いたいくて、行きと同じくらいのスピードで走っていた。

海が見える距離まで着くと、砂浜で家に貝殻をつけている拓人くんの後ろに壮矢が立っている。


あの日と……初めて会った日と同じ光景で。

 

夕日に向かって、目を閉じて、何かを願っている。

 

あの日と違って涙は流していなかったが、あの日と同じように夕日に照らされて綺麗なままだった。

その光景に目を奪われた。
 
それでもどこか声をかけられる雰囲気ではなくて、私はその場から静かに離れた。少し離れてから壮矢にメッセージを送る。

[梨実と仲直り出来た。ありがとう。今日はこのまま帰るね]

メッセージの送信ボタンを押しながら、先ほどの光景を思い出す。

壮矢は初めて会った時も海に向かって、夕日に向かって、何かを願っていた。とても真剣な顔で。
 
少し気になったが、その日の夜には壮矢から「仲直り出来て良かった」と返信が来て安心する。

その日の夜は疲れもあって、すぐに眠りについてしまった。