冬の光にヴェールは要らない

男の子の服はヒーローのイラストがプリントされていて、女物のマフラーは合わないかと思ったが、薄茶色と濃い茶色で出来ている私のマフラーはあまり違和感がなさそうで安心する。
 
別に綺麗事じゃない。

杏香の言葉が影響したわけじゃない。

ただこのマフラーくらいは良い子に持っていて欲しいと思っただけ。

「ありがとう……お姉ちゃんは寒くないの?」

「大丈夫だよ」

ほらね、私の心配までしてくれる良い子だ。

この子の方がこのマフラーが似合うに決まっている。
 
しかし、私にはマフラーよりも気になることがあった。

先ほどからこの子と話しているのに、この子の親がいない。