冬の光にヴェールは要らない

杏香が私の言葉に嬉しそうに笑う。

「万桜が初めて甘えてくれた!」

その瞬間、もう会話はいつものテンポに戻っていた。

「初めてじゃないって!」

「初めてだよ〜」

「違うってばー!」

「はいはい、万桜はツンデレなんだから」

そんな会話をしている内に私たちの出場するバスケの試合の時間が迫っていた。

時計を見た杏香が「もうこんな時間じゃん……!」と言って立ち上がる。

「万桜、行こ!」

私の前でコートに向かって走り始めた杏香を、私は慌てて追いかけた。
 
杏香を見ていると眩しかった。最低な私と杏香は似合わないと思っていた。

でも、いま杏香を追いかけている自分は嫌いじゃなくて。

目の前を走っている杏香はたまに振り返って、笑いかけてくれる。だから……私は走るスピードを上げて杏香の横に並んで一緒にコートに向かう。
 
馬鹿みたいだけれど、午後の試合は勝てる気がしてならなかった。