冬の光にヴェールは要らない

「ねぇ、万桜。万桜っていつも泣かないでしょ?」

「え……?」

「いつも優しいけれど、弱音は吐かないし、泣きもしない。だからかな。今、万桜が泣いている姿を見せてくれて嬉しい。不謹慎だけれど、本当に嬉しいの。だから思う存分泣いて良いよ」

杏香はそれだけ言って、私の隣に座ったまま何も言わずにいてくれる。

観客席に戻りたいけれど、涙は止まらなくて。

それでも、ベンチから少しだけバドミントンの試合が見えている。

丁度マッチポイントのようだった。偶然見えた最後のスマッシュはあまりに綺麗で、ぼーっと見つめてしまう。

「あの選手、上手だね」

杏香の言葉に頷く瞬間、最後の得点を決めた生徒の顔が見えた。



 

案外、運命というものはあるのかもしれない。





「壮矢?」





コートから遠いので、相手が振り返るはずはない。

それに杏香にも聞こえないほど小さな呟きだった。

これはきっと運命でもない。

だって壮矢は別の高校に通っていて……でも近くの高校なのだからいてもおかしくない。

でも、今この瞬間に壮矢を見つけてしまったことに意味がある。その姿を見ただけで勇気が貰える気がした。
 
杏香への言葉を(つむ)ぐ勇気に変わる。



「杏香、私も杏香が大好き」



私の突然の言葉に杏香が私と目を合わせた。