冬の光にヴェールは要らない

私は慌てて、男の子の身長に合わせるためにしゃがんだ。

「大丈夫? 痛くなかった?」

「大丈夫……」

大丈夫と男の子は言ったがどうみても元気がない。

「本当に大丈夫? ぶつかった所痛い?」

「痛くない……けど、冷たい」

「冷たい?」

ああ、寒いってことか。

さっきの音もこの男の子のくしゃみだろうし。
 
私の頭に先ほどの杏香の言葉がよぎる。

『万桜のマフラー可愛くて好きだから冬!』

私は自分のマフラーを取って、その男の子に巻いてあげる。