冬の光にヴェールは要らない

そんな私の動揺を感じ取ったのか取っていないのか分からないが、杏香がニコッと笑った。

「万桜、今日の夜は電話しながらゲームだからね。忘れないでよ。一緒にインテリアショップ行くんだから!」

それだけ言って、杏香はバスケコートに戻っていく。

私もそろそろ休憩を終わらせないといけないのに立ち上がれない。まだ落ち着かなかった。

それで、別の子に「交代しよ」と言われれば、身体は勝手に動いてくれて、いつの間にか授業も終わっていく。

それでも、まだどこか夢見心地のような感覚だった。
 
夜に杏香と電話をしても、杏香はあまりにいつも通りで何事も起こっていないように感じてしまう。

実際、杏香は何も気にしていないのかもしれない。

杏香が気にもしないような当たり前の言葉で、私は涙が出そうなほど期待してしまったのだろうか。

そんな問いの答えを導こうと考えを巡らせようとしたが、「そんなことしなくて良いよ」と頭の中で壮矢が笑った気がした。